モンゴル自由連盟党

 

                                                                                              

遊牧禁止、漢族の下で労働 『モンゴル族も人権危機』

(東京新聞 7月19日付け朝刊より転載)

 

    中国新疆ウイグル自治区での暴動は、中国にとって少数民族問題がアキレス腱(けん)であることを浮き彫りにした。ウイグルやチベットに続いて、中国の少数民族政策に抗議の声をあげているのが内モンゴル自治区に住むモンゴル族だ。日本に在住するオルホノド・ダイチン氏(42)は、モンゴル族の人権擁護活動に取り組み、同自治区の現状の厳しさを訴えている。 (外報部・浅井正智)

 ウイグル暴動後の今月十二日、東京都内で行われた七百人規模(主催者発表)のデモ。集まったのはウイグル人だけでなく、中国の政策に強い不満を持つチベット人、そしてモンゴル族のダイチン氏の姿もあった。マイクを握った同氏は「中国の少数民族弾圧は今回だけでなく、六十年続けられてきた」と声を張り上げた。 ダイチン氏は、内モンゴルでの人権侵害や文化・自然破壊を阻止するため、二〇〇六年末、同地出身の在外モンゴル族からなるモンゴル自由連盟党の創立に加わり、幹事長に就任。活動の中心は日本のほかモンゴル国、スウェーデンなどにあるという。

 内モンゴルでは、人口二千四百万人のうちモンゴル族の比率はわずか17%。新疆ウイグル自治区のウイグル族が46%、チベット自治区のチベット族が93%なのと比べ、「『中国化』がいかに進んでいるかが分かる」とダイチン氏は指摘する。

 漢族による搾取の構図は新疆と共通だ。中国政府は内陸部の経済発展を促すため、二〇〇〇年から西部大開発を進めている。内モンゴルは石油、天然ガスなど地下資源が豊富だが、ダイチン氏は「結局、資源を中国本土に持っていかれるだけで、モンゴル族の生活は全くよくならない」と不公平感を訴える。  住民の定住化を図る名目で遊牧が禁止され、「都市へ移住を強制された人々は、安い労働力として、漢族の下で働くことを余儀なくされた」。遊牧生活から引き離されたモンゴル族は七万人以上。開発のひずみは環境悪化にも表れており、砂漠化や工場から出る排煙、排水による公害が著しいという。

 それでも政府は「中国の少数民族政策は世界で最も成功した政策」と自賛する。例えば少数民族には大学入試で優遇措置が取られている。しかし実態は、モンゴル族が中国語で教育を受ければ入試の得点に加点するといった、同化政策と一体なのだという。 中国の国外で長い歳月、運動の実績を重ねてきたチベット、最近注目されているウイグルと比べ、中国国内のモンゴル問題はそれほど知られていない。

 ダイチン氏は「ウイグル、チベットとも連帯し、自由と民主主義を愛する世界の人にわれわれの現状を訴えていきたい」と力を込め、さらにこう語る。

 「漢族も満州族の清朝に支配され、二百八十年の間、独立をスローガンに戦って勝利を収めた歴史がある。民族の主権や尊厳を求める運動は、一〜二年で終わるものではない」

                              

 

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